研究概要 |
1.小麦粉を酵素処理した低アレルゲン化小麦粉中のペプチドを逆相HPLCを用いて分離した。約20ピークのうち、2つが主要であった(溶出順にピーク1、ピーク2とした)。これらを患者末梢血リンパ球刺激試験に供した結果、ピーク2に強い活性が認められた。ピーク2を単離し、質量分析を行った結果、アミノ酸残基が6〜7のペプチドであることが明らかとなったので、アミノ酸シーケンサーなどを用いて構造決定を行っている。 2.低アレルゲン化小麦粉臨床試験(長期投与試験)を継続実施した。投与前および期間中、経時的に採血した。小麦グルテンをtotal gliadin,α,β,γ,slowω,fastωの各グリアジンおよびHMW,LMWグルテニンに分画し、各画分に対するELISAを行った。長期投与により患者の大部分は普通の小麦粉食へ移行することが可能となったが、特にslowω,fastωグリアジンおよびHMW,LMWグルテニンに対する抗体価の減少が顕著であった。従って、これらが、発症、寛解にメインに関与する可能性が考えられた。現在、平行して経時的に末梢血リンパ球を採取し、抗原刺激に対する応答の変化を追跡している。 3.昨年度に実施した動物実験の結果とも合わせると、アレルゲンをタンパク質分解酵素で処理することで作製した低アレルゲン化食品は、特にT細胞エピトープが残存している場合、アレルギー治療・予防効果を有する可能性が極めて高いことが示された。
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