土壌撹乱を低減させるために必要となる走行管理システムの構築に向けて、本年度は下記の検討を行った。 1.東京大学北海道演習林において行われた林業機械走行実験によって得られたデータを解析することによって、走行回数、土壌密度とわだち深さ、cone indexの関係を明らかにし、これにより、わだち深さという現場で簡易に計測できる指標を使って、苗木の生長に影響する撹乱強度を判断する方法を確立した。 2.上記の走行回数と土壌密度の関係と昨年度、明らかにした苗木の生長量と土壌密度の関係を使うことによって、苗木の生長に影響を与えない許容走行回数を求める方法を確立した。 3.昨年度、製作した履帯模型の実験装置を使って、機械重量と土壌条件を変えて実験を行った。昨年度構築した3次元個別要素法を用いた土壌モデルを使って、この実験を再現することができる履帯式機械のモデルを構築した。また、3次元個別要素法のパラメータが土壌モデルへ与える影響を明らかにした。これにより、様々な機械、土壌条件でシミュレーションを行うことによって、機械走行跡地の土壌撹乱を予測できるシステムを構築することが可能となった。 4.GPS・ジョイロ・加速度センサーからなるスピードセンサーの利用を検討したところ、昨年度、GPSのみでは計測できなかった場所でも車両の位置を計測することが可能となった。これにより林業機械の走行をモニタリングすることが可能となり、携帯電話・衛星通信等でこのデータを送信することによって、複数の機械が作業を行う現場においても機械の走行管理を行うことが可能となった。この管理システムに伐採・集材作業を最適化するアルゴリズムを組み入れることにより、作業の効率が向上し、冗長な走行を減少させることにより、土壌撹乱を減少させることもできる。今後、このシステムをさらに検討することにより、広く林業現場へ応用できるシステムが構築されると考えられる。
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