研究概要 |
平成13年度では,夏季と秋季に底質調査を行い,底質中の硫化物濃度,重金属濃度(Fe, Mn, Pb, CuおよびZn)の空間的な分布特性を調べるとともに,底質中の有機物含有量や底泥の粒度組成などの項目を加えて総合的な湖山池の底質環境の評価を試みた.まず,底質中の硫化物・重金属濃度,底質のEC, pH, TOC, TN,粒度組成の全調査項目を用いた主成分分析により,底質の汚濁の程度を表す指標と還元状態の強弱を表す指標の二つの主成分が抽出された.次に,これらの主成分の主成分得点を用いてクラスター分析を行った結果,湖山池の底質環境は,1)汚濁が進行し,還元状態が強い地点,2)重金属や有機物は多いが還元状態は比較的弱い地点,3)今後底質環境の悪化の可能性がある地点,4)底質環境は良好である地点,に分類ができた.上記1)のクラスターが持つ特性は湖山池の湖盆形状に起因すると考察され,リンや窒素の溶出が容易に行われる環境下にあり水環境に与える悪影響が最も大きいクラスターと考えられる. 平成14年度では,湖山池最深部で水温の鉛直分布,表層と底層のDO,風速風向,全天日射量の連続観測を行った.データのサンプリング時間は10分とし,一回の測定期間を約3週間として5月〜11月までの計6回の観測を実施した.7月下旬では,湖底付近が無酸素状態となる日が数日続き,表層DOも4mg/L以下と小さい値であった.表層DOと底層DOの変動時系列から,Wavelet解析を援用してそれらの変動特性を抽出し,さらに風速・日射量に対するDOの応答特性を検討した.その結果,表層DOでは約1.2〜11.6日周期の緩やかな変動成分が支配的であり,また風速と日射量の約21.4時間周期の変動成分と良好な相互相関を示した.底層DOでは時間スケールの短い変動の寄与が多く,風速・日射量との応答性は見られなかった.
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