研究概要 |
昨年度は,多数のため池を対象とした簡便な地震危険度の評価方法を提案した.ため池被害調査と「ため池防災データベース」のデータを用い,ニューラルネットワークによってため池の危険度を学習・評価したものである.ため池関連の(1)ダム形式,(2)堤高,(3)堤頂長,(4)天端幅,(5)上流法面勾配,(6)下流法面勾配,(7)堤体材料,(8)築造年代,(9)改修歴,(10)被災歴,(11)地形,(12)表層地盤,(13)表層地盤の固さ,(14)表層地盤の年代の14項目と対象地震による各ため池での最大加速度と震央距離の2項目を被災要因として,ため池地震危険度評価のシステムを構築した.提案手法を2001年芸予地震に適用した結果,高い精度の再現性が得られた. 本年度は,上記システムの検証のために,1つのため池を対象に地震応答解析を実施し,ため池諸量と被害の関係を明らかにした.対象としたため池は芸予地震で被災した愛媛県松山市のため池である.K-Net(強震ネット),KiK-Net(基盤強震ネット)の強震記録を基に,修正Ramberg-Osgoodモデルによる非線形地震応答解析を行った.ため池堤体天端にクラックが発生した要因を解明するため,石灰処理されたコアと貯水位に着目し,パラメトリックスタディを実施した.その結果,ため池堤体天端のクラックは,貯水の有無に関係無く,コア部における石灰処理の影響であることがわかった.また,地震によるすべり破壊は発生しなかったが,地震応答解析の結果から得られた局所安全率による評価によってもその安全性が確認できた.
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