研究概要 |
粘土鉱物へのカドミウムの吸着挙動を明らかにすることは土壌汚染機構の解明に必要不可欠である。筆者らは昨年度の研究において粘土鉱物へのカドミウム吸着挙動がpHに依存することに着目し,特に層状ケイ酸塩鉱物である2:1型粘土のモンモリロナイトへの異なるCd吸着形態を示すpHを吸着実験結果から3つの範囲に区分した。そこで本年度はミクロな研究手法である広域X線吸収微細構造(EXAFS)および熱脱離法(TPD)を用いて,区分したpHでのモンモリロナイトへのCd吸着構造を解析および検討した。 以前に測定したモンモリロナイトに吸着させたCdのEXAFSの解析を進めた結果,以下の事がわかった。1)pH3(pH4.5以下)で吸着させたCdは最近接酸素原子が6配位している溶液中のイオン状態と同様である。2)pH7(pH4.5-7)ではCdイオンとCd(OH)_2に似た構造のCdが混在する。また3)pH10(pH8以上)ではCd(OH)_2様の構造のCdが主要であることがわかった。さらにTPDを用いてpH7で吸着させたCd粘土試料における各イオン(Cd, O_2,H_2,Al, Si)の脱離スペクトル(200〜900℃)を観測した結果,2つの異なるCd脱離エネルギーが存在する事がわかった。さらにモンモリロナイトの結晶内の構造水と共に構造元素であるSi, Alの脱離も観測し,pH3よりpH7でその脱離温度が高かった。このことからpH7で吸着したCdはSi, Alの脱離を含めたモンモリロナイトの結晶破壊を抑制すると考えた。すなわち破壊を生じやすい結晶端面にCdがCd(OH)_2様の構造で吸着していると推察した。
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