研究概要 |
近年,食品の加熱,乾燥,殺菌操作への赤外線利用が注目されているが,農産物などの固体食品の多くは複雑な構造を有する湿潤多孔質物質であり,その赤外域における光学特性の把握はきわめて困難である。そこで本研究では,食品モデルの赤外分光解析とモデル食品の赤外線乾燥実験をおこない,農産物などの食品の赤外線乾燥機構を解明することを目的とした。そして,本年度は以下の成果を得ることができた。 1.水分移動現象に関する特性把握 食品モデル中における水分拡散係数に関するデータと水分吸着特性について検討した。その際,吸着データの解析には化学ポテンシャルを考慮し,吸着空間の開放度を意味するn値をパラメータとした修正Dubinin-Astakhov(DA)式を用いた。その結果,分子論より導かれるBET式のパラメータと修正DA式のパラメータの関係性を実験的に示すことができた。この結果を第13回国際乾燥工学会議(IDS)で発表し,Drying Technology誌に掲載されることとなった。 2.食品モデルの通風乾燥モデルの構築 乾燥試料の熱風乾燥特性の定量的な把握を目的とし,昨年度取得した通風乾燥データを用いて,そのシミュレーションを行った。その際,食品モデルの平均空孔径を実験パラメータとするとともに,新たな総括物質移動係数を導入することにより,乾燥特性の定量的な予測が可能となった。この成果はDrying Technology誌に掲載される予定である。 3.赤外線乾燥モデルの構築に関するアプローチ 乾燥試料の赤外分光特性,水分移動現象に関する特性,および通風乾燥モデルとの相互関係を解析することにより食品モデルの定性的な赤外線乾燥モデル構築の可能性が示唆された。
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