研究概要 |
本研究では、日本在来馬の起源と成立を明らかにすることを目的とし、DNA多型を指標として、以下の項目について検討を行った。 I 現生在来馬のミトコンドリアDNA D-loop領域の塩基配列の決定 日本在来馬を含むアジア五カ国(ベトナム・モンゴル・韓国・中国・日本)の在来馬181個体についてミトコンドリアDNA D-loop領域613bpの塩基配列の決定を行った。全181個体の同領域のハプロタイプは79タイプ観察され,国あるいは地域に特異的なハプロタイプは観察されていない。また、日本在来馬集団の場合,特に集団間変異の割合が集団内変異の割合を上回っており,日本在来馬集団としてプールすることが出来ず,他のアジア諸国の在来馬集団とは特徴が異なっていることが明らかとなった。集団の系統関係では、日本の在来馬は他の在来馬と離れる傾向が強く、この原因としては集団サイズの現象に伴う遺伝的浮動の影響が考えられる。 II 遺跡出土骨試料からのDNA抽出と塩基配列の決定 鎌倉時代の遺跡から出土した馬骨試料からDNAを抽出し、塩基配列の決定を試みた。現生の日本在来馬と比較すると、一部は同じハプロタイプを示す個体も存在したが、大部分は異なったタイプを示していた。また、全体的には変異が少なく、出土地域で比較的に通ったハプロタイプを示していた。この結果は供試したサンプル数が少ないことと、現生のウマで決定された613bpに満たない400bpで比較したことから、今後さらに検討が必要であると考えられる。 III 新たな変異マーカーの作出 在来馬DNA試料をもとに70種類の10merのランダムプライマーを用いたRAPD解析を行ったところ、馬種特異的な変異パターンが16種類のプライマーセットから得られている。現在それらのバンドのクローニングと塩基配列決定を行っているが、同法を用いた新たな変異マーカーの作出は十分可能であることが示唆された。
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