研究概要 |
本研究において、マロン酸誘導脳障害ラットモデルにおいて、脳損傷の数時間後から傷害の様子が画像化でき、早期診断できることを見いだした(Asanuma et al.,Neurosci. Lett.329,281-284,2002)。このとき、スピントラップ剤α-phenyl-N-tert-butylnitrone(PBN)を投与されたラットにおいて、早期脳障害の防護効果があることを見いだした。MRI法では一般に使用されるスピンエコー法では傷害の3日以降にしか防護剤の効果を観察できなかったが、拡散強調画像法とそこから得られた見かけ上の拡散係数画像(ADCマップ)を用いて、マロン酸誘導脳障害に対する防護剤投与の効果は実験開始の3時間後からすでに防護効果があることが観察することができた。このADCマップを用いた観察ではスピンエコー法で変化現れる時間には差が観察されなかった。この早い段階での変化を観察するためにより高速の拡散強調画像撮影法を行うMRIシーケンスプログラムを作成し、実験を行ったところマロン酸を投与した30分後には投与部位の脳細胞は死滅しているが、防護剤を投与された場合には細胞の死滅が免れていることがわかった(第134回獣医学会)。一方、防護剤による脳の防護機構はマロン酸投与部位だけではなく、脳全体の機能を防護していることも血液酸素消費濃度依存画像(BOLD)画像により判明した(第134回獣医学会)。 高磁場・高速MRIによる早期画像診断法は脳障害の予後判定、中枢神経防護剤の開発やその薬効評価に効力を発揮することが本研究より明らかとなった。
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