研究概要 |
p53癌抑制遺伝子はヒトの癌において最も変異している遺伝子であり、遺伝子治療の標的として注目されている。しかしながら、P53蛋白の不活化を検討する場合、p53遺伝子の塩基配列の解析、p53に変異が認められない場合でもMdm2の過剰発現についての解析が必要である。本研究では、イヌやネコの自然発生腫瘍材料を用い、p53カスケードの異常と中心体過剰複製の相関を体系的に解析し、中心体過剰複製がp53カスケードの異常の指標となるか否かを期間内に結論づけることを目標として研究を遂行した。1.ネコのMdm2遺伝子の塩基配列は不明であったため、このクローニングを行った(Miki et al.,Gene,投稿中)。2.ネコのリンパ腫細胞を用いてp53遺伝子変異、Mdm2遺伝子・蛋白の発現を検討したところ、Mdm2の過剰発現は認められなかったが、p53遺伝子変異と中心体過剰複製に相関が認められた(Miki et al.,Am. J. Vet. Res.,投稿中)。3.イヌの種々の自然発生腫瘍50検体を用いて、p53遺伝子変異、P53蛋白・Mdm2蛋白・Cyclin E蛋白の過剰発現と中心体過剰複製の相関を体系的に解析したところ、中心体過剰複製が20%以上の割合で起こっていたものは16検体認められ、P53カスケードに異常の認められた検体は全て中心体過剰複製を生じていた。また、中心体過剰複製を生じていなかった検体はP53カスケードに異常が認められなかった。以上の結果から、P53蛋白の不活化のスクリーニング検査として簡便な中心体の免疫染色を行うことが有用であることが明らかとなった(Okuda et al.,Cancer Letters,投稿中)。
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