研究概要 |
我々は、食中毒予防等の食品衛生管理の重要性から、生きた微生物の検出について、検出原理・装置の開発研究を行ってきた。その中で検出対象が「生きた状態」であることからその栄養代謝経路に注目をし、もっとも一般的な栄養源であるグルコースを基質として蛍光剤2-[N-(7-nitrobenz-2-oxa-1,3-diazol-4-yl)amino]-2-deoxy-D-glucose (2NBDG)を開発した。本研究では、生きた細胞を1分間という迅速に、かつ1個体の細胞を検出出来る手法の開発を目指している。 (1)各種微生物への2NBDG法の応用 これまで主に試験菌としていた大腸菌に加え、実際に食品から単離された大腸菌群や食中毒菌(Salmonella enteritidis、Salmonella typhimurium, Vibrio mimicus、Listeria monocytogenes、Staphylicoccus aureus, Yersinia enterocolitica, Bacillus cereus)への2NBDG取り込みを調べた。その結果、試験菌41種類のうち35種類の菌で取り込みが見られ、1分間という短い取り込み時間で蛍光顕微鏡観察に十分な蛍光強度を示した。以上の結果は、2NBDG法の食品衛生面での有用性を示すものと期待される。 (2)試料調整、捕捉法の改良 サンプル吸引アダプタの開発と、オートステージ移動プログラムを作成した。顕微鏡視野内に収まる径を複数作成した本アダプタを用いることで、全サンプルの確実なフィルター捕捉を可能にした。また、オートステージプログラム使用により観察の自動化が進み、観察時間が短縮された。 (3)飲料水試料中の生菌の1分間アッセイ 飲料水(ウーロン茶、アセロラドリンク)に大腸菌を添加し、2NBDG法による検出を行った。その結果、ウーロン茶での試験では、3〜5個以内の細胞でも検出することが可能であり、従来法であるコロニーカウント法との高い相関性を得ることが出来た。 (4)標準プロトコールの完成 昨年度作成したドラフトを基に、上記の結果を加えたプロトコールを作成した。
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