研究概要 |
本研究課題は、BMPの内在性インヒビターであるnogginやBMP受容体のdominant-negative変異体をレトロウイルスベクター(RCASBP)を用いてニワトリ胚で発現させることによって、BMPシグナル伝達をin vivoで阻害することによりその脊髄運動ニューロンの発生に及ぼす影響を検討するものである。まずRCASBPを用いた遺伝子導入法を確立する目的で、細胞死を抑制することで知られるBcl-2を運動ニューロン死の時期の時期に発現させてニューロン死が影響を受けるか検討した。その結果Bcl-2が発生早期に起きる頚髄運動ニューロン死を抑制することが明らかになった(Sato, et al. 2002)。このことからRCASBPレトロウイルスベクターがニワトリ胚の脊髄運動ニューロンへ遺伝子導入するための有力な手法であることが確認されたため、nogginを組み込んだウイルスを胚に感染させたところ、胚全体の発生が著しく損なわれそのままの実験系では脊髄運動ニューロンの発生に及ぼす影響を評価することが困難であった。これはnogginの持続的且つ広範囲な発現のためと考えられたため、導入遺伝子発現の時間的な制御を目的としてTet regulatory systemをこのレトロウイルスに組み込んで機能するかを検討した。その結果、ドキシサイクリン投与によって遺伝子発現が効率よく誘導されることが確認された(Sato, et al. 2002)。現在運動ニューロン特異的な発現を目指して各種の転写調節領域を検討している。当初目的には未だ至っていないが、目的達成のためのステップは確実にクリアしており今後さらに推進する予定である.
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