研究概要 |
脳に特異的に発現しているNAP22と細胞内シグナル伝達系の主要因子カルモジュリンとの相互作用がミリスチル化により制御される新規のタンパク質間相互作用であることを見い出し、その分子機構を^1H-NMR、溶液X線小角散乱、CD、蛍光スペクトルの実験データをもとにしたバイオインフォマティックスにより解析している。これまでにこの相互作用が、1)ミリスチル基依存的であること、2)リン酸化により抑制されること、3)モル比が2:1の複合体を形成すること、また、複合体形成時に、4)カルモジュリン結合部位が既知の複合体で見られるようなαヘリックスを形成していないこと、5)慣性半径が既知のそれよりも大きいこと、などを明らかにした。現在は、NAP22とカルモジュリンの相互作用が脳内におけるシグナル伝達系の制御にどのように関与しているのかに着目して研究を進めている。 また、srcがん遺伝子産物とHIV nef遺伝子産物では実験的にミリスチル化が示されているが、両者に関してもNAP22と同様の機能制御が存在することを見い出し、その分子機構、および生理作用、特に細胞がん化とエイズの発症の分子機構の解明を念頭に、研究を進めている。 さらに、ゲノムデータを用いたバイオインフォマティックスにより生体内でミリスチル化が予測されるタンパク質をリストアップし、実際にそれらのタンパク質がカルモジュリンと相互作用するかについての網羅的解析を開始した(Bioinformatics Group, Institute of Molecular Pathology(Austria)との共同研究)。
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