神経芽細胞腫は代表的な小児腫瘍であり、病型から、大きく2種類に分類される。小児腫瘍は胎生期に。既に生じていると考えられるものも多く、神経芽細胞腫では、特に、他の腫瘍には見られないStage IVsと呼ばれる放置していると消退していくものもある。これは、発生の過程で消退すべきものが出生時に遺残したものと見ることもでき、アポトーシスの異常が原因である可能性も考えられる。このタイプの神経芽細胞腫では、ゲノム解析上、1p36の欠失と相関することも報告されてきた。そこで、その原因となる遺伝子が1p36に局在する可能性を考え、手始めに、解析が極めて遅れていた1P36領域のゲノム解析を始めた。まず、当該領域をカバーするBACにょるコンティグの作成を行ったが、1Pでは神経芽細胞腫のみならず、肺癌、胃癌、膵癌、乳癌、大腸癌など、数多くのヒト腫瘍においても異常が高頻度に見られるため、これらの癌研究にも応用できるように、コンティグ作成の範囲を、1p36領域から、1P35領域までの非常に広範囲の領域にまで拡張した。この成果は論文の形で報告しただけでなく、ホームページ上でも公開し、広く世界の研究者の研究に役立てている(http://www.ncc.go.jp/research/1p-genome/)。また、この際に開発したBACスクリーニングシステムにより、膵癌における染色体12番の高頻度欠失領域の解析にも応用した。今後は、1P36領域から神経芽細胞腫の発生に密接に関わる遺伝子の単離・解析が重要である。
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