研究概要 |
ICSBPはInterferon Regulatory Factor (IRF)ファミリーに属する転写因子で、腫瘍抑制遺伝子として機能する。ICSBPはインターフェロン(IFN)刺激による発現誘導をうけ、特異的DNA配列(Interferon-Stimulated Response Element, ISRE)に結合、その下流に存在する遺伝子の発現を抑制的に制御する。しかしながら、その分子機構は明らかになっていなかった。本研究ではIFN刺激後にEtsファミリー転写因子ETV6がICSBP依存性にISREにリクルートされることが示された。ETV6は単独ではISREに結合できないが、ICSBPの存在下でICSBP/ETV6複合体としてISREに結合できた。In vitroで発現させたICSBPおよびETV6蛋白を用いた解析から、ETV6のカルボキシ末側領域がISCBPのDNA結合領域と直接会合することが明らかになった。In vivoにおいてETV6のISREへのリクルートはIFN刺激後ICSBPの発現が誘導したのちに観察された。ICSBPとETV6の共発現はISREの転写活性を低下させた。ICSBPとETV6による協調的な発現誘導制御を受ける蛋白としてIFN誘導蛋白2',5'-OASを同定した。ICSBPとETV6を過剰発現させた細胞ではIFNによる2',5'-OAS発現誘導が減少していた。さらにIFN刺激後ヒストン脱アセチル化酵素HDAC3がISREにリクルートされること、またETV6がHDAC3と会合することが明らかになった。このことはICSBPによるISRE転写活性抑制にはETV6を介した脱アセチル化が関与している可能性を示唆する。
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