研究概要 |
宿主の生体内における病原性の発現には試験管内と異なり、より複雑な機序が関与していることが推測される。こうした生体内で働く病原遺伝子に関する研究は細菌感染症の病態解明、ひいては新しい治療法や治療薬の開発につながるものと期待される。我々はsignature tagged mutagenesis法を用いてin vivoにおけるレジオネラの病原性関連遺伝子を探索し,多数の病原性遺伝子を特定した。(Proc Natl Acad Sci USA 96:8190,1999)本研究ではこれをさらにすすめて、細菌特有の情報伝達系の一つであるptsP遺伝子の全塩基配列を決定した。既知の遺伝子との相同性検索より、細菌に特有の情報伝達系であるPTSシステムの一つを構成する酵素Enzyme I Ntrが本遺伝子の産物であり、この情報伝達系システムが細胞内増殖菌であるレジオネラのin vivoでの病原性発現に深く関与していることを明らかにした(Infect Immun 69:4782,2001)。本研究の中で、Legionella pneumophilaよる肺胞マクロファージ内および肺胞上皮に対する細胞内増殖能および細胞障害性がレジオネラ肺炎の病態において重要な意義を有するものと認識された。 本研究では引き続いてレジオネラによる細胞障害性にはアポトーシス誘導が関与していることを解析した。レジオネラの一つであり,腐葉土から検出されるL.longbeachaeはL.pneumophilaと同様に宿主細胞に対して細胞障害性を有し,アポトーシスを誘導することを示した。このアポトーシス誘導はcaspaseの活性化を介していることが明かとなったが腫瘍壊死因子やFasシステムの関与は明らかではなく他のシグナルを介してアポトーシスを誘導している可能性が示唆された。(J Med Microbiol 51:159、2002)。
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