研究概要 |
ダイオキシン類の毒性発現には、Ah-レセプターが関与することが知られている。これまで、Ahレセプターの高アフィニティーリガンドである、コプラナーPCB、3,3',4,4'5-pentachlorobiphenyl処理によって、ラット肝臓のカルボニックアンヒドラーゼIIIおよびアルコール脱水素酵素がタンパク質レベルで低下することを見い出し報告して来た。筋肉と肝臓を比較した場合、肝臓においてCAIIIの発現抑制が顕著であった。本研究では、その肝臓特異的な発現抑制機構を理解するために、Ahレセプターリガンドによる生体影響について、初代培養ラット肝細胞を用いて検討した。初代肝培養細胞を、3,3',4,4',5-pentachlorobiphenylと、3-methylcholanthreneによって、12時間曝露し、全RNAを単離してカルボニックアンヒドラーゼIIIのプローブを用いてノーザンブロットを行った。ノーマライズには、β-アクチンを用いた。Ahレセプターの高アフィニティーリガンドである、3,3',4,4',5-pentachlorobiphenylは、濃度依存的にカルボニックアンヒドラーゼIIIのmRNAレベルを低下させた。また、3,3',4,4',5-pentachlorobiphenylよりも弱いAh-レセプターリガンドである3-methylcholanthrene処理によっても濃度依存的な抑制が観察されたが、同程度の抑制には、より高濃度が必要であった。これらのことから、カルボニックアンヒドラーゼIIIは、初代培養肝細胞においても、Ah-レセプターリガンドによって抑制されること、この系が肝臓特異的カルボニックアンヒドラーゼIIIの発現抑制の研究に利用し得ると考えられた。
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