研究概要 |
本年度はがん一次予防サービスとして遺伝子診断カウンセリングを想定し、その経済学的な評価法としてWillingness to Pay(WTP)を用いた自記式評価法を開発するため、その妥当性を検討することを目的とし、コンジョイント分析法による部分効用の組み合わせとしての総効用値との関連を検討した。識者との協議により対象疾患を家族性乳がんと家族性大腸腺腫症とし、WTPを評価するための仮想設問とコンジョイント分析で用いるサービスの構成要素を抽出するための質問票を作成した。調査は二回行い、一回目はコンジョイント分析に用いるカウンセリングサービスの構成要因の抽出、二回目で各サービスのWTPの測定及びコンジョイント分析による総効用値との相関を解析することとした。調査対象は某職種名簿をもとに無作為抽出に抽出された20歳以上70歳未満のもの、1,015名(1回目)、及び1,251名(2回目)であり、郵送にて無記名調査票を配布、それぞれ453名、353名より調査票を回収した。解析は欠損値のないものについて行い、コンジョイント分析に用いる構成要素については因子分析により乳がんについては4因子、家族性大腸腺腫症については5因子を規定した。この結果に基づき、合成型コンジョイント分析法で総効用を推定するため各因子とそのレベルの重要性について10段階で評価できる質問票を作成し、二回目の調査に用いた。加えて、競りゲーム法によりWTPを聴取し、その対数値とコンジョイント分析による部分効用値の加重平均値との単相関係数と年齢を補正した偏相関係数を算出した。単相関係数は乳がん0.56、家族性大腸腺腫症0.67、偏相関係数についてはそれぞれ0.60、0.71であった。この結果をもとに、今後がん予防のサービスとしての遺伝子診断カウンセリングの費用便益分析をすすめる予定である。
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