研究概要 |
分析試料中の微量毒素を抽出し、蛍光誘導体へと変換した後、高速液体クロマトグラフー蛍光検出器で検出する方法について検討した。毒素の抽出・蛍光誘導体への変換は、固相マイクロ抽出法を利用した。本年度は、植物毒素の中でも中毒例の多いトリカブト、チョウセンアサガオ、イヌサフランを中心に検討した。 1)蛍光誘導体化の検討 反応時間が短く、副反応が少ない蛍光誘導化剤の一つである4-fluoro-7-nitro-2,1,3-benzoxadiazole(NBD-F)を用いて、アコニチン、コルヒチン、ヒオスチアミンの蛍光誘導体化を種々検討したが、蛍光誘導体は得られなかった。 2)SPMEでの抽出 水にアコニチン、コルヒチンを添加した試料を用いて、SPMEの抽出相への抽出条件を検討した。その結果、アコニチンの抽出には30分程度を要したものの、コルヒチンは10分程度で抽出が可能であった。また、抽出相の特異性を検討した結果、CW/TPRでの抽出が良好であった。 3)アコニチン、コルヒチンの分析法検討 最適条件下で検量線を作成した結果、0.2-20μg/mlの範囲において良好な直線性が得られ、検出下限は、0.1μg/mlであった。日内変動(1.0および10μg/ml)は、8.5%以内と再現性のよいものであった。 4)実際例 市販のトリカブト(2品種)を購入し、本法にて分析した結果、アコニチンを初めとする有毒成分が検出できた。また、有毒成分の種類と含量から、それぞれの品種の違いを同定することも可能であった。 生体試料中のこれら有毒成分の濃度は、ng/mlレベルであるため、本法をそのまま適用するには、感度の面で問題が残された。今後、タンデム質量分析計などのより高感度の検出器での検討が必要である。しかし、本法は、法医学試料の中でも食べ残しや胃内容物といった有毒成分濃度の高い試料の迅速分析には適した方法である。
|