研究概要 |
高濃度CCK刺激ラット膵腺房細胞初代培養系(実験的急性膵炎モデル)を用いて、培養液中へのタンパク分解酵素阻害剤添加(gabexate mesilate、nafamostat mesilate、Pefabloc)による膵腺房細胞内トリプシン活性阻害効果、膵腺房細胞内AP-1遺伝子発現シグナルを検討した。 100nMCCK刺激によって、膵腺房細胞内トリプシン活性化(細胞内TAP濃度の増加)が生じた。Nafamostat mesilate、gabexate mesilate, Pefablocは用量依存性にトリプシン活性を阻害した。一方、膵腺房細胞内でのAP-1遺伝子発現については,本年度の研究ではJNK (c-Jun N-terminal kinase)の活性化およびp38の発現をwestern blot法で観察した。100nM CCK刺激直後からのJNK, p38の誘導が観察された。このJNK, p38の誘導は膵腺房細胞のTNF-αによる刺激でも同様に観察された。しかし,Nafamostat mesilate、gabexate mesilate, Pefablocは膵腺房細胞におけるJNK, p38の誘導を阻害しなかった。 以上より、高濃度CCKによって生じる腺房細胞内でのトリプシン活性化はIκBキナーゼの活性化を生じさせることによって、NF-κBの活性化を起こしているが(平成13年度報告)、JNKを介するAP-1誘導シグナルには関与していないことが示唆された(平成14年度報告)。 CCK刺激実験的急性膵炎モデルにおける,細胞内のいわゆるearly eventでは,細胞内酵素活性化シグナルと炎症反応シグナルのクロストークが存在するが,アポトーシス誘導に関しては細胞内酵素活性化を介さない,高濃度CCK刺激によって活性化される,他のシグナル伝達系路の存在が考えられる。
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