研究概要 |
肝発癌モデルにおいて、慢性肝炎の経過を組織学的に観察すると、移植9カ月後に肝細胞の異形性が出現し、17カ月後に100%(12/12)に肝腫瘍が発生した。FasLを介する経路を抑制する目的で、肝炎の経過中にFasLの中和抗体を投与すると以下の変化を認めた(J.Exp.Med.196: 1105,2002)。 a)血清トランスアミナーゼ値から、肝炎のピークは1/3に軽快した。 b)FasLにより活性化される肝細胞内のcaspase-3は、1/4に低下していた。 c)肝細胞のアポトーシスをTUNELアッセイにより解析すると、1/5に低下していた。 d)肝細胞の再生増殖をPCNA染色により検討すると、1/3に減少していた。 e)肝組織に浸潤している単核球数や抗原特異的Tリンパ球の割合に変化はなかった。 f)肝炎発症後7〜23ヵ月間の観察期間中に発生した肝腫瘍は、13%(2/15,P<0.0001)に減少した。 これより、肝発癌モデルにFasL中和抗体を投与することによって、肝への炎症細胞の浸潤には影響しないもののFasLを介するシグナル経路が直接抑制されて、肝炎が軽減するとともに肝細胞のアポトーシス及び再生増殖が低下し、肝癌の発生が減少することが示された。
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