研究概要 |
申請者らは、胃粘膜中に局在しているCOX-2が胃潰瘍の修復に深く関わっていることを報告してきた(Gastroenterology,112,387,1997)。今回我々は、H.pylori感染させたスナネズミを用いて胃粘膜内に誘導されたCOX-2蛋白が胃粘膜防御に働いていることを見出し、選択的COX-2阻害剤を前投与したH.pylori感染スナネズミにおいては胃粘膜中のCOX-2活性が減少し、胃粘膜障害が増悪することを見出した(Futagami S, et al.Alimentary Pharmacol & Ther.2002)。一方、COX-2が胃粘膜の修復のみならず、粘膜免疫応答にも深く関与しており、T cellのTh1,Th2のバランスにも関与している可能性が報告されている。そこで我々は現在、消化管上皮から粘膜固有層内T細胞への液性因子による刺激伝達とCOX-2発現との関係を検討していた。具体的には、H.pyloriの水抽出成分(H.pylori water-extract ; HPWEP)をMKN-28細胞と48時間培養し、その培養上清中に粘膜内T細胞を活性化するcytokineがreleaseされているか検討した。1)HPWEPによる刺激により、MKN-28細胞由来のIL-7,MCP-1,IL-8,RANTESのmRNAレベルでの発現を認めた。そしてこれらのcytokineにより2)T細胞の増殖がupregulateされるものの、T cell由来のCOX-2はMCP-1による刺激によってのみ発現され、IL-8,RNATES,IL-7,による刺激ではCOX-2発現は認められなかった。また、抗MCP-1中和抗体によって、粘膜内T cell由来のCOX活性は抑制されることが判明した。これらの結果を現在英文誌に投稿中である。
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