研究概要 |
本年度の研究目的は、Weelの制御(Adenovirus-Wee1)をもちい癌に対する効果をみることであった。しかしながら、Pfzer社がWee1のinhibitorを開発した。そこで、今年度はこの試薬でTGFβ1により誘導されたWeelによるG2/M arrestを解除できるのをまず検討することにした。 高分化肝癌の特徴を持つHep3BにTGFβ1を添加後、12,24,36,48hの細胞周期の変化をflow cytometerにて観察した。Cdc2,Weel,Cdc25C, Cdc2-Ty15のリン酸化をWestern blot法にて、Wee1,Cdc25CのmRNAの発現量をRT-PCRで検討した。さらに、WeelのInhibitorをTGFβ1を添加後、24hに2.5nMの濃度で6h処理した。処理、無処理群のCdc2,Cdc2-Ty15をWestern blot法で48h後の細胞周期の変化もflow cytometerで観察した。 TGFβ1処理24時間後にG2/M arrestを起こした。この時点でCdc2の蛋白発現量に変化はなかったが、その活性は完全に消失していた。Cdc2-Ty15のリン酸化は12時間で増強した。WeelのmRNAの発現は一定であったが、蛋白は12時間をピークに増強していた。TGFβ1を添加後24hのHep3BをWeel Inhibitorで処理をするとCdc2は変化がなかったが、Cdc2-Ty15は著明に減少した。G2/M期にarrestしていた細胞はG1期に移動した、48h後にはこれらの細胞はapoptosisに陥った。Weel Inhibitorは肝細胞癌のTGFβ1による抵抗性獲得の機構を破壊し、apoptosisへ誘導できうる可能性があり、肝癌への治療への応用も期待された。
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