研究概要 |
気管支喘息治療において、ロイコトリエン受容体拮抗薬の位置付けが次第に高まっているが、効果を示す症例は約6割程度といわれている。そこで、気管支喘息患者白血球からのロイコトリエン産生量から、ロイコトリエン受容体拮抗薬に対する薬剤反応性の予測が可能であるかを検討した。気管支喘息患者31名を対象とした。症状の安定している非発作期に血液検査を施行し、ロイコトリエン受容体拮抗薬の投与4週間後に効果を判定した。効果はスコア化した自覚症状、β2刺激吸入薬の使用回数、朝のピークフロー値のそれぞれ1週間の平均を喘息日記から求め、投与前後で比較した。被検者静脈血3mlよりデキストラン法にて白血球浮遊層を分取し、遠心後上清をIL-3添加bufferに再浮遊した。細胞浮遊液200マイクロリッターに抗ヒト高親和性IgEレセプター抗体50マイクロリッターを加え40分間培養した。上清中のスルフィドロイコトリエン量(ロイコトリエンC4,D4,E4の総和)をELISAにて測定した。自覚症状の改善度、β-2刺激吸入薬使用頻度の改善度は、ピークフロー値の改善度と相関した。治療前に比べ10%以上のピークフロー値の改善度を示したものを効果ありとした。効果を示した患者の背景、因子では、性別、病型、アスピリン喘息の有無、ステロイド治療の有無、病気の重症度、年齢、治療前の白血球数、好酸球率、好塩基球率、血清IgE値は治療効果といずれも関連を認めなかったが、白血球からのロイコトリエン産生量は関連を認めた。白血球からのロイコトリエン産生量3500未満に対してロイコトリエン産生量3500以上ではオッズ比11、95%CIは2から60.5で治療効果の予測が可能であった。治療開始前の末梢血白血球からのロイコトリエン産生量はプランルカストの効果と相関し、薬剤反応性を予想しうる指標となる可能性が示唆された。この結果を2001年日本呼吸器学会、米国胸部学会にて発表した。さらに研究結果をまとめた論文は学術雑誌Chestに掲載された。
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