研究概要 |
1.血管平滑筋細胞アポトーシス誘導におけるHsp60, MMP-1の関与 冠動脈不安定プラークにおいてはMMP-1発現が亢進しており、また脆弱プラーク発症には炎症とストレス蛋白(Hsp60)の関与が考えられている。我々は今まで血管平滑筋細胞(VSMC)に抗酸化剤であるpyrrolidinethiocarbamate(PDTC)を添加することによるアポトーシス誘導を検討してきたことから、本年度はVSMCにPDTC(10μM)を添加した至適アポトーシス誘導条件下において、Hsp60、MMP-1によるアポトーシス誘導増強の有無をDNAラダーやヘキスト33258染色などにより半定量的に確認した。アポトーシス関連遺伝子であるBax, Bcl, BadについてもWestern blotないしはquantitative PCRにより検討を加えた。近年、PI-3K/Akt系がBadの発現抑制を介してアポトーシスを抑制するという報告があり、我々のVSMCアポトーシスモデルにおいてもMMP-1による影響がPI-3K/Aktの経路を介しているか否かを検討した。PI-3K/Akt系の減弱を伴っていれば、今後、発現アデノウイルスによるAkt強制発現によりMMP-1、Hsp60によるアポトーシス誘導増強が減弱されるか否かを検討する予定である。 2.プラーク破裂モデルの作成 我々は以前ラット頸動脈擦過モデルにおける新生内膜形成がpluronic ge1を用いてのPDTC投与により抑制され、VSMCアポトーシスを誘導していることを確認した。今後、動脈硬化モデル動物であるWHHLラビットを用いて、動脈硬化病変が大動脈に見られる時期に大動脈外膜側から同様のgelを用いてPDTCを投与し、VSMCアポトーシス誘導を確認し、この現象にHsp60またはMMP-1の同時添加を行い、冠動脈脆弱プラークモデルとしての実験動物における脆弱動脈硬化巣の再現を試みる。さらに、PI-3K/Akt系がVSMCアポトーシスを抑制する可能性があるため、PI3KまたはAktのdominant negativeアデノウイルスを同時投与しアポトーシス増強の有無を検討する。
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