研究概要 |
1.熱ショック蛋白(HSP)誘導剤としてのgeranylgeranylacetone(GGA) GGAがHSF1を活性化することを,gel mobility shift assayを用いて証明した。また,GGAによるPKCの活性化がPKCδのtranslocationであることを既に見出していたが,PKCδの選択的阻害薬であるrottlerinで前処置すると,HSF1の活性化およびHSP70の発現が生じないことを明らかにし,GGA→HSP72発現に至る過程におけるPKCδの活性化の重要性を再確認した。また,このGGAによって血管内皮にもHSP72の発現が誘導されることを免疫電顕染色法によって明らかにし,GGA投与ラットでは虚血再灌流時にもNOの産生が保持され内皮機能が温存されることを明らかにした。 2.糖尿病およびインスリン抵抗性モデルにおけるHSP72の発現 1型糖尿用モデル動物としてストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラツトを,インスリン抵抗性モデル動物として,高脂肪食によるラット(HFラット)を作成し,HSPの発現を検討した。STZラットでは熱ストレスによるHSP72発現が抑制され,しかもこの抑制は雌の方が雄より顕著であった。この性差による違いはエストラジオールでは説明できず,雌における血中のTNF-αは雄より有意に高値であったことから,TNF-αが熱ストレスによるHSP72発現の低下の機序として関与していると考えている。一方,HFラットでは,基礎レベルで既にHSP72の発現が低下していた。現在,イシスリン抵抗性モデルにおけるHSP発現誘導とアディポネクチンをはじめとしたアディポサイトカインとの関連を検討中である。
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