研究概要 |
目的:糖尿病心臓における虚血抵抗性はNa^+/H^+交換系とNa^+-Ca^<2+>交換系を介したCaの過負荷を軽減すること。そして、細胞内pHの調節機構としては糖代謝からのプロトン産生機構の影響が大きい可能性があることを明らかにしてきた。 糖尿病ラット摘出灌流心を用い、preconditioningによる虚血抵抗性増強の機序の解明と細胞内Ca動態、糖代謝の関与を検討する。 方法:SD系ラットを使用。Streptozotocin(50mg/kg)を尾静脈より静注し糖尿病を作成。4〜6週経過後、心臓を摘出、Langendorff法を用い灌流。Preconditioningは3分間の短時間虚血を3回反復することにより作成。心血行動態として、左室圧、大動脈圧、心拍数、冠灌流量を測定した。 細胞内pH濃度測定:pHの蛍光指示薬BCECF/AMを経冠動脈より負荷。500と450nmの励起光を照射し、蛍光強度比を求め測定。 結果:Ischemic preconditioningにより虚血時の細胞内pHの低下は,Ischemic preconditioning非作成群(6.6±0.05 vs 6.8±0.03,p<0.05)に比較し有意に抑制されたが,糖尿病心臓において,虚血時の細胞内pHの低下抑制に対して相乗効果は認められなかった.しかし,基質を除いた条件下では,細胞内pHの低下は基質投与群に比較し軽減された(6.8±0.04 vs 7.0±0.02,p<0.05).しかし,糖尿病群,非糖尿病群における細胞内pH動態において有意な差は認めなかった. 考察 1:糖尿病心臓における虚血抵抗性はNa^+/H^+交換系とNa^+-Ca^<2+>交換系を介したCaの過負荷を軽減することにもとずく可能性がある。 2:糖尿病心の虚血、再灌流後の心機能回復には糖代謝からのプロトンの産生の機構が大きく作用している可能性が示唆された。
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