研究概要 |
Sprague Dawleyラットを用い、コントロール(C)群とインスリン治療群(DM-I)群の2群に分けた。(DM-I)群ではストレプトゾトシン(50mg/kg)を尾静脈より静注し、糖尿病を発症させた後、インスリン(regular insulin 1-2U/100g 体重/日)で治療を行なった。 糖尿病発症4,8,12週後に心エコー検査を施行後以下の実験を行なった。ラット心を摘出しcollagenaseを含むJoklik's mediaで灌流した後、左心室筋を切離し、単離心筋細胞を作製し、単離心筋細胞を作製した。単離心筋細胞を1.5%glutaraldehydeで固定した後Computer image analyzerにより、組織学的に心筋細胞の長径を測定するとともに、Coulter Channelyzerを使用し平均細胞体積を測定した。平均細胞体積/平均細胞長より平均断面積を算出、さらに平均断面積より平均細胞径を算出した。平均細胞体積、細胞長、断面積、心筋細胞長/平均細胞径を指標とし、心筋細胞のリモデリングについて評価した。さらに、凍結した心室筋をTris buffer内でhomogenizeした後55000gで遠心分離し、上清中のタンパク溶液を抽出した。抗phosphotyrosine抗体を使用して、immunoblotting法を用いてtyrosineのリン酸化の程度を評価するとともに、northern blotting法を用いてc-fos, c-jun発現の程度を評価した。 <結果> 昨年度の実験で、糖尿病発症4週で、左室心筋細胞の断面積、径の減少が見られたが、インスリン投与により、これらの変化は軽減した。immunoblotting法では、糖尿病発症4週より、tyrosineのリン酸化が抑制され、c-fos, c-jun発現も減少したが、これらの変化もインスリン投与により、軽減した。この結果より、インスリンによって早期に起こるtyrosineのリン酸化を介したシグナリングの抑制が、糖尿病における心筋細胞のリモデリングに関与している可能性が考えられた。
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