研究概要 |
我々は,フランク誘導から12誘導心電図の合成法を開発した(既報)が,フランク誘導の装着は煩雑で,電極数も多く,臥床時の違和感にも問題があった.初年度の研究では,V_1,V_5,aV_F誘導と等価なeV_1,eV_5,eV_F誘導(関電極がV_1,V_5,左側腹部,不関電極がV_<7R>)の3誘導,4電極から12誘導心電図を合成し,誘導ベクトルの不一致をコンピュータで自動修正する新しい合成心電図法のアルゴリズムを開発した. 方法: 3チャネルディジタルホルター心電計で記録したeV_1,eV_5,eV_F誘導波形から心起電力ベクトル(X, Y, Z成分)を求めた.次に,フランクのimage surfaceから12誘導心電図の各誘導点を中心とした方形9個の位置に相当する誘導ベクトルを全て計測して,心起電力と誘導ベクトルの内積から9つの波形を合成した.標準12誘導心電図と合成波形のQRS波,T波で各々の相互相関係数を求め,その積が最大になる波形を最適な合成波形として自動的に選択されるようにアルゴリズムを設定した. 結果: 1.初年度は,上記ソフトの開発により健常者における安静時合成波形が標準12誘導心電図と形態的・量的にも高い近似性が得られることを確認した. 2.次年度は,本法が虚血性ST偏位に関しても高い近似が得られるか,自転車エルゴメータ運動負荷時に合成心電図用3チャネルディジタルホルター心電計を装着したものを対象とした。運動負荷時の虚血性ST偏位も従来の運動負荷心電図と同様な形態的・量的に高い近似性が得られた.また,心室期外収縮の波形に関しても軸に関して高い近似性が得られ,RS比率に関しては強い相関が得られたことを確認した.
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