研究概要 |
X連鎖無γグロブリン血症(XLA)はBTK遺伝子の異常により骨髄におけるB細胞の分化障害を来す原発性免疫不全症で、末梢血B細胞の欠損による抗体産生不全と易感染性とを特徴とする。診断後は免疫グロブリン置換療法が行われるが、診断前(免疫グロブリン置換療法前)には約20%で重症感染症に伴う好中球減少の合併を認めることがあり、そのメカニズムは明らかでない。骨髄での好中球の成熟障害および末梢血への好中球の動員に関与するサイトカイン、ケモカインの産生異常が疑われている。そこでXLA患者末梢血におけるサイトカイン、ケモカイン産生能を検討し、単球や骨髄系細胞におけるBTKの機能的役割を明らかにすることを本研究の目的とした。昨年度,BTK遺伝子変異が証明されたXLA患者ならびに正常対照よりインフォームドコンセントを得て静脈血をヘパリン加採血し,大腸菌由来のリポ多糖体(LPS)にて刺激培養を行い、上清中におけるG-CSF、GM-CSF、IL-6、IL-8の濃度をELISAで測定し,その結果、G-CSF、IL-6、IL-8についてはXLAと正常対照とで差を認めなかったが、GM-CSFについては、一部のXLAにおいて正常対照に比べ低下を認めたことを報告した。このことより,XLAにおけるGM-CSFの産生障害が疑われたため,次に,フローサイトメトリーによる単球内サイトカインの動態について検討した。XLAならびに正常対照の末梢血をLPSにて刺激培養後、細胞を固定し,膜透過性を高め,抗CD14単クローン抗体および抗サイトカイン単クローン抗体にて二重染色を行い、フローサイトメトリーにて解析した。その結果,XLA患者と正常対照では,単球内におけるGM-CSFの発現に差を見いだすことができず,今後,研究方法の再検討を行う必要があると考えられた。
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