研究概要 |
14年度は、アトピー性皮膚炎でみられる真皮の線維化による慢性化・難治化の機序を検討するために、単球および単球由来樹状細胞上に発現する高親和性IgEレセプターの架橋刺激によりこれらの細胞が産生する細胞外マトリックス分解酵素であるmatrix metalloproteinase (MMP)-3,-9とその阻害酵素tissue inhibitor of matrix metalloproteinase (TIMP)-1の濃度を、アトピー性皮膚炎患者と健常対照者でin vitroで比較解析した。その結果、難治性・重症のアトピー性皮膚炎患者由来の単球および単球由来樹状細胞は対照者のものと比較して、TIMP-1の産生がMMP-3,-9よりも優位であった。単球および単球由来樹状細胞のTIMP-1/MMP-3,-9産生比は細胞外のIL-4,IL-13によって増強し、IFN-γ,IL-15によって減少したことから、Th2サイトカイン優位の環境が組織の分解とリモデリングを阻害して、重症のアトピー性皮膚炎でみられる線維化につながると考えられた。また、細胞外のTIMP-1によって単球のアポトーシスが濃度依存性に抑制され、寿命が延長する結果が得られたことから、TIMP-1優位の環境は組織の線維化に加えて炎症細胞のアポトーシスの抑制を介して組織への長時間の湿潤を招来し、さらなる慢性化につながることが推察された。一方で単球のTIMP-1産生は、副腎皮質ステロイドの添加によって濃度依存性に抑制されたが、免疫抑制剤にはこのような効果はみられなかった。以上の検討から、アトピー性皮膚炎の慢性化・難治化には、単球および樹状細胞の機能抑制によるリモデリングの正常化が重要であることが示唆された。
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