研究概要 |
心電図同期PET(ポジトロン断層)は心機能と代謝を同時に調べることができる.また心筋厚は,左心室機能や心疾患の判定に対して重要な情報を与える.今回,心電図同期心筋PETを用いて心筋厚を自動的に測定するプログラムを開発した.使用言語は,科学技術データ解析用パッケージInteractive Data Language (IDL)であった.アルゴリズムは,まずアンシャープマスキングでボケを除去した.次に放射能が高集積の部位を1,その他を0とする2値画像に変換した.そして,2値画像の基本的処理のひとつである距離変換を行った.距離変換後の画像は,形はオリジナルの2値画像と同じで,画素の値は0-画素への最短距離を示すものとなった.この距離から心筋厚を求めた.このようにして求められた画像は,形が心筋そのもので,画素の値が心筋厚を示しているものとなった.これを極座標表示することで各領域の心筋厚を計測した.このプログラムをファントムデータで評価した.使用装置はPET装置シーメンスEXACTであった.心筋動態ファントムを作製し,これにF-18を封入して心電図同期PETを撮像した.収集はファントムからの信号で同期し,16分割とした.結果は,測定された収縮期心尖部厚は2.3cmであり,真の値から0.3cmほど過小評価した.測定された収縮期心基部厚は0.03-0.39cmであり,真の値から0.03-0.39cmほど過小評価した.実際の心筋厚が1.0cm以上の領域に限ると,測定された心筋厚と真の値は非常に良い相関を示した(y=0.01+0.93x, r=0.89, S.E.E.=0.18cm). 以上のように,PETの断層像から自動的に心筋厚を計算できた.実験結果からは,実際の心筋厚が1.0cm以上の領域においてPETは精度良く心筋厚を測定できるといえた.
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