サマリウム-コバルト磁石を用いた消化管の吻合は胆管-空腸吻合や食道-空腸吻合などの臨床にすでに応用されています。われわれはこの磁石吻合を血管にも応用しようと考え、まず門脈-下大静脈吻合を作成しました。この吻合の完成には通常最低でも8週間かかることが今までの動物実験の結果からわかっています。今までの実験では磁石の留置は外科的に開腹して下大静脈と門脈を露出し、直視下に血管を穿刺してシースを挿入、血管内に磁石を留置するという非常に侵襲の高い方法であったため、手技に伴う合併症が数多く認められました。今年度はより侵襲の少ない血管吻合を目指しX線透視装置を用い、経皮的にシースを血管内に挿入し、シース内を通してカテーテルに接着させた磁石を留置する方法を考えました。しかし磁石を回収するまでの期間、カテーテルを留置したままにしておくため、今まで使用してきた磁石では吻合完成まで8週間かかってしまい、その間カテーテルを留置しておくのは出血、感染、血栓形成の問題から困難と思われます。そこで吻合完成までの期間を短縮するために磁石の改良が不可欠と思われました。われわれは磁石の吻合する部分の形状を凹凸にして挟み込んだ組織に対してより強い力が加わるようにし、さらに磁力もより強力にした磁石を作成しました。この磁石を用いて雑種成犬での動物実験をはじめたところです。現在のところまで吻合の完成はまだ確認されておりませんが、次年度中には成果が発表できるものと考えています。
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