放射線照射による血管新生因子の発現量の変動についての検討を行うにあたり、前年度に引き続き以下の実験を行った。培養細胞により産生される血管新生因子発現の確認と定量のため、今年度は、ヒト腫瘍由来の培養細胞であるヒト乳癌由来のMDAMB231とヒト膀胱癌由来のT24に加えて、ヒト子宮頚癌由来のHeLa細胞を用いて実験を行った。前年度の経験を踏まえ、今年度は培養細胞量や培養時間をはじめとする種々の条件を変えて実験をおこなった。しかし何れの培養細胞系に於いても、照射線量とVEGF165発現量との間に相関関係を見いだす事は出来なかった。この原因として、一つには培養条件の僅かな差異により培養細胞数が変動し同一条件とする事が困難なため、産生される血管新生因子の相対的濃度が大きく変化してしまう事が考えられた。しかしながら、最も大きな原因として考えられることは、単一の細胞系(ここではヒト腫瘍由来培養細胞)よりなる今回のin vitro実験系においては、腫瘍随伴マクロファージをはじめとする多くの関連細胞との複雑な相互作用が関連しているin vivoでの血管新生因子の産生を再現することの困難さが、今回の実験結果に反映されているものと推察された。 以上の結果を踏まえ次年度以降は、マウス等を用いたin vivoの実験系により、より生体内での環境に近い条件を再現し、照射線量と血管新生因子発現量の相関関係を検討予定である。
|