研究概要 |
本研究は,NMDA受容体を調節する分子の機能異常が精神分裂病の原因であるとの仮説を検証することを目的とする。 昨年度は、精神分裂病の病因候補遺伝子であるDISC1(Disrupted in Schizophrenia 1)が、NMDA伝達系神経伝達機構の上流に位置し、精神分裂病の病態生理に関与している可能性があるとの仮説にもとづき、Yeast two-hybrid systemを用いて、結合蛋白としてCitronを同定することに成功した(31st Annual Meeting Society for Neuroscience、サンディエゴにて発表)。 Citronは、中枢神経系において神経回路網形成やシナプス形態に関与しており、NMDA受容体の結合分子であるPSD-95と結合することが既に報告されており、DISC1は、これらの分子を介してNMDA受容体機能の調節に関与している可能性がある。本年度は、in situ hybridization法により、マウスの発達段階におけるcitronの発現パターンを調べ、胎生後期の細胞分裂の盛んな部位にCitronが局在していることを確認した。DISC1も同時期に脳内での発現が豊富なことがwestern blotting法により確認されており,DISC1がcitronを介してcytokinesisやシナプス形態構築に関っている可能性が高い。また、細胞レベルでの機能解析を行うため、両蛋白質を培養細胞(HeLa, COS7,PC12)に強制発現させ、その局在や機能について解析中である。 今後さらに両蛋白質の結合が神経細胞で果たす役割について機能解析を行なうとともに、精神分裂病患者において、遺伝子変異や多型を調べる予定である。
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