研究概要 |
本研究は、森田神経質患者に対する入院森田療法絶対臥褥期における睡眠覚醒リズムおよび身体的・心理的自覚症状の変化を、精神生理学的手法を用いて検討することを目的とする。 対象は、森田神経質基準案において森田神経質定型群あるいは非定型群に該当し、入院森田療法が施行された男性患者15例である。病型は、強迫観念症9例、発作性神経症3例、普通神経質3例から成り、平均年齢30.5±7.5歳[19-49]であった。 各対象について、絶対臥褥期の7日間、以下の尺度について連続測定した。(1)睡眠覚醒リズムの客観的評価:腕時計型活動量連続測定計(MINI-motionlogger actigraph;活動計)。(2)睡眠覚醒リズムの主観的評価:睡眠覚醒リズム表(睡眠日誌)。(3)身体的・心理的全般状況の主観的評価:visual Analog Scale(VAS)。 その結果、(1)臥褥1日目においては、臥褥後半に比較して主観的入眠時刻が有意に前進しており、客観的総睡眠時間が有意に延長していた。(2)1日の平均活動量が、臥褥1,2日目と比較して臥褥4,6,7日目において有意に増加した。(3)VASにおいて、臥褥1日目には臥褥後半に比較して緊張度が有意に高値を、全般的気分が有意に低値を示した。また、臥褥後半に比較して臥褥前半では眠気が有意に低値を示した。などの所見が得られた。 絶対臥褥期の7日間を通して、臥褥1日目における主観的入眠時刻の前進と客観的総睡眠時間の増加以外には夜間主睡眠の位相変化に乏しく、睡眠内容にも大きな差異を認めなかった。一方、1日を通じての平均活動量(体動量)は、臥褥前半に比較して臥褥後半、特に臥褥7日目において有意に増加していた。そして活動量の増加は、全般的気分の向上や緊張度の低下といった身体・心理的全般状況の主観的変化と有意な相関を示した。この所見は、森田療法における絶対臥褥の効果として、患者の心身の活動欲が亢進したことと関連付けて考えられた。
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