研究概要 |
1.セラミド耐性HL-60亜株におけるPKCアイソザイムの役割 ヒト白血病細胞株HL-60のセラミド耐性亜株(HL-CR)を用いて、PKCアイソザイム量をウェスタンブロット法により検討したところ、PKCδのみが親株よりも減少し、PKCα,βI,ε,ζは親株よりも増加していた。そこで、PKCδ発現プラスミドをHL-CRにトランスフェクトしHL-CRにおいてPKCδを強制的に発現させたところ、HL-CRのセラミドに対する感受性の増加が認められた。これらの結果から、HL-CRのセラミド耐性のメカニズムとしてPKCδの発現低下が関与していることが示唆された。(Experimental Cell Research, in press) 2.スフィンゴシンによるアポトーシス誘導機序の解明 セラミドによるアポトーシス誘導時にc-junのmRNA量が増加し転写因子AP-1のDNA結合能が増加すること、c-junのアンチセンスオリゴヌクレオチドによりセラミドによるアポトーシスが抑制されることから、セラミドによるアポトーシス誘導においてc-jun/AP-1の活性化が重要な役割を担うことが示唆されることをすでに報告した(The Journal of Biological Chemistry, 270,27326-27331,1995)。今回、スフィンゴシンによりアポトーシスが誘導される際にも転写因子c-junのmRNA量が増加することを見出した。スフィンゴシンによるc-jun mRNAの増加はPKA阻害剤H-89により増強されたが、PKC阻害剤(staurosporine, H-7)によってはあまり影響を受けなかった。一方、セラミドによるc-jun mRNAの増加はPKC阻害剤により阻害されたが、PKA阻害剤によっては影響を受けなかった。また、スフィンゴシンによるアポトーシス誘導はPKA阻害剤によって増強され、セラミドによるアポトーシス誘導はstaurosporineにより阻害された。これらの結果より、スフィンゴシンによるc-jun mRNA発現誘導機序はセラミドによるc-jun mRNA発現誘導機序とは異なるが、スフィンゴシンによるアポトーシス誘導においてもセラミドによるアポトーシス誘導と同様にc-junの活性化が重要な役割を果たすことが示唆された(FEBS Letters, 524,103-106,2002)。
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