研究概要 |
ラット5/6腎摘は腎線維化モデルである。臓器線維化においてTransforming growth factor-β (TGF-β)は中心的なサイトカインで、Connective tissue growth factor (CTGF)はTGF-βに誘導され、共に臓器の線維化を促進する。Hepatocyte growth factor (HGF)は尿細管上皮の保護や再生し、TGF-βの線維化作用に拮抗し腎線維化を抑制する。本研究は、マウス5/6腎摘モデルと共培養系で腎線維化に関するサイトカインについて検討した。 Wild type mouse 5/6腎摘(WTNx)群残存腎でHGF,TGF-β1,CTGF,α1(I) procollagen (col-I)の発現は腎摘8時間後に全て増加し、2週間後にはコントロールレベルに減少した。後にHGF,TGF-β1は再上昇を認め、CTGF,col-Iはコントロールレベルを維持し残存腎に腎線維化は生じない。培養系にてTGF-β1刺激で間質線維芽細胞(TFB)はcol-Iを、尿細管上皮細胞(PTEC)はCTGFを発現する。共培養下でPTECの共存は、CTGF産生を介しTGF-β1でTFBのcol-I発現を促進した。一方、HGFはPTECのCTGF産生を抑制し、共培養系ではTGF-β1でcol-I産生を減少させた。TGF-β1 transgenic mice 5/6腎摘(TGNx)群残存腎では、WTNx群と異なり腎線維化が認められたが、recombinant HGFで残存腎のCTGF発現は減少し、病変進行が抑制された。TGF-β刺激で線維芽細胞のcol-I発現は尿細管上皮細胞の存在に影響を受け、HGFは両者の相互関係を修飾する。つまり、HGFは尿細管上皮細胞にてCTGF発現を抑制することで、in vivoおよびin vitroでTGF-β1の線維化促進作用に拮抗している。
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