血管拡張、腎血流増加を有するプロスタグランジンE2(PGE2)産生の最初のカスケードに働くシクロキシギナーゼ2(COX2)は、尿細管糸球体フィードバック機構(TGF)を介して腎保護に働く可能性があるが明らかではない。腎不全状態においてNSAIDによりCOX2を抑制すると腎機能の急速な低下を認めることから、腎不全状態で特にCOX2の腎保護作用が増強している可能性が考えられる。本研究の目的は、腎不全状態においてCOX2が腎微小循環および、これを調節するTGFにどの程度関与しているかを検討することである。 昨年度は、COX2の慢性腎不全での微小循環作用を調べるために、まず慢性腎不全ラットの作成およびそのラットでの腎微小循環を検討した。Na-K ATP ase阻害薬であるウワバイン30μg/kg/dayを浸透圧ポンプにより皮下投与して慢性腎不全ラットを作成し、その腎微小循環作用を検討した。高食塩下におけるウワバインの慢性投与では、vehicle群と比較して尿量、糸球体濾過値、ナトリウム排泄率は明らかに低値を示した。さらに、腎微小穿刺実験では輸入細動脈の拡張と同時に輸出細動脈のより強い収縮を認めた。本年度はこの慢性腎不全ラットにおいてCOX2選択的阻害薬を投与することにより、腎不全状態下でのCOX2の役割を調べた。COX2選択的阻害薬投与下において、尿量、糸球体濾過量、ナトリウム排泄量は減少傾向を示した。しかし、ラットにおける各個体差が大きく、そのばらつきが何に起因するか現在検索中である。腎微小穿刺実験では、COX2選択的阻害薬投与下で輸入細動脈の収縮の傾向を認めたが、個体差を認めた。
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