研究概要 |
・糖尿病性腎症の発症に関する遺伝子の検索は、我々の基礎的研究でヒト腎生検での核酸の酸化的障害産物である8-OHdGの蓄積を確認したところ、糖尿病性腎症では糸球体内皮細胞、上皮細胞、間質の血管内皮細胞にその蓄積が観察され、高血糖状態に基づく核酸の酸化的障害と糖尿病性腎症発症の関連性が示された。この結果を基に、核酸の酸化的障害と関連することが報告されている遺伝子多型と糖尿病性腎症発症の関連性について検討した。有意な結果が得られたのは8-oxoguanine DNA glysosylase (hOGG1)のSer326Cys多型のみで、すでにCys326はSer326に比較して核酸の酸化的障害の除去能が弱いことが報告されている。今回の研究では、II型糖尿病426症例を対象にその遺伝子頻度を検討した。糖尿病性腎症を発症した症例の遺伝子頻度は(C=45%,S=55%)で、腎症を発症しなかった症例の(C=35%,S=65%)であった。糖尿病性腎症を発症した症例では核酸の酸化的障害の除去能の劣るCを有意に高く持つ傾向にあることが示された(p<0.01)。American Society of Nephrologyにて発表した。 ・IgA腎症の発症に関連する遺伝子検索は、近年6q22-3に原因遺伝子座の存在が報告された。今回、同様の部位においてhomozygosity mappingを施行した。(1)16症例の近親婚間に生まれたIgA腎症症例と、(2)10症例の家族内発症例についての検討を行った。(1)Homozygosity mappingの結果では16症例中9症例がhomozygosityであった。(2)の家族内集積では10家系中6家系がこの座位に連鎖していることが判明した。これらの家系に共通している遺伝子座位には、既知の遺伝子であるlamininα2を含む3つの遺伝子のみの存在が確認されている。今後、これらの遺伝子を候補遺伝子としてSNPS解析などを行う予定としている。 ・IgA腎症進展に関しても前述のhOGG1遺伝子多型についての検討を行った。末期腎不全に陥った症例の遺伝子頻度は(C=63%,S=37%)で、腎機能の悪化しなかった群の(C=47%,S=53%)であった(p<0.05)。IgA腎症でも同様にこの遺伝子多型が関与している事が判明した。
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