胎便存在下では本来十分な表面活性を有するはずの肺サーファクタントが不活化されて、機能的なサーファクタント欠乏が引き起こされることがよく知られている。最近では、胎便はサーファクタント代謝にも影響するという知見も得られている。肺サーファクタントに対する胎便の影響を検討する上で、肺サーファクタントを合成・分泌する肺胞II型細胞と胎便との相互作用を検討することは極めて重要と考えられる。一方、胎便吸引症候群では、肺出血の合併が多いことが知られているものの、肺出血発生の機構は解明されていない。 本年度は、肺胞II型細胞に対する細胞毒性を検討した。また赤血球に対する胎便の細胞毒性も合わせて検討した。 1.赤血球に対する影響 胎便による赤血球の溶血を評価した。方法は、胎便と赤血球を混合し、37℃で2ないし24時間インキュベーションを行った。その後、5000×g、30分間の遠心後、上清の吸光度(540nm)を測定した。その結果、赤血球溶血は、胎便の濃度依存性に増加した。 2.肺胞II型細胞に対する影響 肺胞II型細胞培養上清へのLDH出現により、胎便の細胞毒性を評価した。その結果、胎便の濃度依存性に培養上清中LDHは上昇した。 以上、胎便の細胞毒性が証明された。次年度は、胎便が肺胞II型細胞のサーファクタント蛋白質mRNA発現に及ぼす影響を検討する予定である。
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