研究概要 |
腫瘍の発生にはいくつかの遺伝子異常が関与し、成長ホルモン産生下垂体腺腫の一部にG蛋白の遺伝子異常が報告されている。成長ホルモン過剰は成人において末端肥大症を引き起こし高血圧、糖尿病をはじめとする代謝異常より心血管病を引き起こすだけでなく悪性新生物の合併頻度も高く、この疾患における平均寿命も健康人に比して短い。われわれはこれまで成長ホルモン産生下垂体腺腫に対してはG蛋白遺伝子などの解析を行ったが、これらの異常は見いだせなかった。そこで、DNAマイクロアレイ法による機能解析より成長ホルモン産生下垂体腺腫の成因を検討することとした。 平成13年度のDNAマイクロアレイ法を用いた検討よりヒト非ホルモン産生下垂体腺腫と成長ホルモン産生細胞腺腫組織間で、いくつかの細胞内情報伝達系に関わる遺伝子の発現量に差を認めた。ヒト非ホルモン産生下垂体腺腫に比べ成長ホルモン産生細胞腺腫で発現の増加を認めた遺伝子はDLG-3,NOTCH1,RFC37,CTC85,RAD52,GRM1,NACHRA6,bystin, LCFであり、逆に低下していた遺伝子はCDKN2,CETP, IRF1,VLA4,DLK, WNT2,WNT10Bであった。平成14年度は、これらの遺伝子ひとつひとつについてmRNAの発現をノーザンブロット法でも検討した。マイクロアレイ法と同様、成長ホルモン産生細胞腺腫ではDLG-3,NOTCH1,RFC37,CTC85,RAD52,GRM1,NACHRA6,bystin, LCFのmRNAの発現増加が認められた。発現の低下していた遺伝子のひとつであるCDKN2のプロモーター領域のメチル化が他の下垂体腺腫においてみられることより、成長ホルモン産生細胞腺腫についてもCDKN2のプロモーター領域のメチル化の有無を検討したが認められなかった。
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