研究概要 |
脂質代謝異常および骨粗鬆症とGHあるいはGH受容体遺伝子多型の関係について 今年度は,脂質代謝異常を呈する患者2名(高脂血症群),脂肪肝を呈する患者2名(脂肪肝群),骨粗鬆症患者2名を選び,GH-1遺伝子およびGH受容体遺伝子の既報の多型について解析した。対象には上記疾患を認めない患者2名を選んだ。GH-1遺伝子に関しては,今回の検討では,全例で1663Aであった。GH受容体遺伝子に関してはエクソン6のコドン168の多型は全例がGGGであり,GGAの例は1例もなかった。エクソン10のコドン526に関しては,高脂血症群の1例,脂肪肝群の1例および正常群の1例でロイシン/イソロイシンのヘテロ接合体であり,それ以外でイソロイシン/イソロイシンであった。したがって,疾患群と遺伝子多型との関連は確認できなかった。それ以外に正常群の1例で,GH受容体の新規のエクソン4内のコドン51のチロシンがイソロイシンに変わるヘテロ接合体のミスセンス変異(T51I)を同定したので,この変異のGHとの結合親和性およびGHシグナルにおよぼす影響を機能解析した。 GH受容体のT51I変異の機能解析 人工的にGH受容体cDNAのコドン51をACA(チロシン)からATA(イソロイシン)に組み換え,発現ベクターpcDNA1に組み込んでCHO細胞に強制発現した(M細胞)。同様に正常GH受容体強制発現細胞(W細胞),正常と変異を同時に発現した細胞(M&W細胞)も作成した。まず,リガンドであるGHとの結合親和性を確認した。その結果M細胞はW細胞の約半分に結合親和性が低下していた。しかしながら,M&W細胞ではW細胞と差がなかった。次にGH添加後のシグナル伝達能を,signal transducer and activator of transcription(STAT)-5を介する転写活性能で評価した。その結果,M細胞はW細胞の約70%に活性が低下していたが,M&W細胞は,W細胞と有意な差がなかった。今回の実験結果からは,T51Iのヘテロ接合体変異はGHのシグナル伝達に影響をおよぼさないことが示唆された。
|