研究概要 |
CAMPS (cAMP-GEFII)は膵β細胞をはじめ中枢神経系、神経内分泌系などに広く発現しており、膵β細胞ではcAMP濃度を感知するセンサーとしてインスリン開口放出の制御に関与すると考えられる。申請者はCAMPSの膵β細胞での機能を直接的に明らかにする目的でCre/loxPシステムを用いてコンディショナルCAMPS遺伝子破壊マウスを作製することを試みた。申請者は、特定組織以外で完全に遺伝子欠損し、特定組織で発現がレスキューされる「conditional rescue法」を考案し、逆向きのloxPでExon 1を挟むようにしてloxPノックインマウスを作製し、CreによるExon 1の反転で遺伝子破壊とレスキューを行うこととした。loxPノックインマウス(CAMPS^<loxP/+>)は正常に出生したが、CAMPS^<loxP/+>を全身性にCreを発現するマウス(Cre-Tg)と交配してExon 1が反転したマウスを作製しようとしたところ、Creを発現しloxPアリルを有するマウス(Cre-Tg+,CAMPS^<loxP/+>マウス)は全く得られなかった。そこでノックインマウスのコンストラクトを詳細に検討したところ、遺伝子の反転により正常CAMPSのmRNAと約1kbに渡り相補な構造を有するmRNAが形成されCAMPS遺伝子の発現が抑制されることが明らかになった。そこでCre-TgとCAMPS^<loxP/+>マウスを交配し、全身性にCAMPSを破壊したマウス胎児を用いて表現型の解析をしたところ、胎生13.5日以降ではCre-Tg+,CAMPS^<loxP/+>は全く存在せず、少なくとも胎生13.5日以前に致死的な変化が生じていることが推測された。この結果からCAMPSが胎児期の個体発生において極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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