研究概要 |
脂質代謝を制御している核内受容体の多型が高脂血症の遺伝的背景に与えている影響を明らかにするため以下の検討を行った.PCR-DGGE法および直接塩基配列決定法を用い高脂血症患者100例を対象とした検討から脂質代謝を調節する核内受容体であるPPARα遺伝子多型D140NおよびG395E変異,PPARγ2遺伝子P12A変異,PPARδ遺伝子ではThr411(silent C to T)多型を同定した. 次にこれらの変異について,一般人口中での影響を検討した.一般人口男性298例中においてPPARα遺伝子G395Eを6例に,D140Nを2例に認めた.血清脂質値においてG395E保持者は有意に総コレステロール値およびLDLコレステロール値の上昇を認めたが,中性脂肪およびHDLコレステロール値の有意の変化は認めなかった.D140Nでは有意の血清脂質値の変化を認めなかった. PPARγ2遺伝子P12A変異は一般人の7%に存在し有意にHDL-C低値であった.PPARδ遺伝子ではThr411(Silent C to T)多型は特に血清脂質値などに影響は与えていなかった. ヒト肝癌細胞を由来とするHepG2細胞を用い,PPARαの発現ベクターと,その転写活性を評価するためのレポーターベクターをリポフェクション法にて細胞に導入した.レポーターベクターはホタルルシフェラーゼの上流にPPRE配列を挿入し,発現されたルシフェラーゼ量として測定できるようにしたものを用い,内部コントロールとしてウミシイタケルシフェラーゼを発現するベクターを用いることで,デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイシステムとして発現量を測定した.結果in vitroの機能解析においてPPARα遺伝子G395EおよびD140N変異はいずれもwild typeと比較し有意に機能亢進を示した.高トリグリセライド血症においてPPARαを活性化するフィブラート剤を使用するとLDLコレステロール値が上昇する場合があるが,類似のメカニズムからPPARα機能亢進多型が高LDL血症をきたす遺伝素因となっている可能性が示唆された.
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