平成13年度の研究において酵母Two-Hybrid法により転写因子BETA2と結合する蛋白として単離した新規遺伝子Alpha1について以下の研究を行なった。 1.Alpha1によるグルカゴン遺伝子転写調節能の検討 Alpha1の全長cDNA配列を哺乳動物細胞で組み換え蛋白発現させるためのベクターであるpRC/CMVに組み込み、既にクローニング済みであるマウスグルカゴンプロモーター配列をルシフェラーゼ遺伝子の5'上流に結合させたレポータープラスミドと共に、マウス膵α細胞由来細胞株であるα-TC1.6細胞(グルカゴンの高発現が認められる細胞株)に導入し、48時間培養後にルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、まずグルカゴンプロモーター配列を含むレポータープラスミドを導入したものでは、グルカゴンプロモーター配列を含まないレポータープラスミドを導入したものと比べて、ルシフェラーゼ活性は数十倍高くなった。また、Alpha1をpRC/CMVベクターに組み込んで過剰発現させたα-TC1.6細胞ではルシフェラーゼ活性のさらなる上昇が認められた。従って、今回同定した新規遺伝子Alpha1はグルカゴン遺伝子の転写活性化に関与している可能性が高いと考えられた。 2.培養細胞におけるAlpha1蛋白発現の検討 Alpha1に対するペプチド抗体を作成し、α-TC1.6細胞および膵β細胞由来細胞株MIN6細胞より抽出した蛋白質を用いてWestern blot法により、培養細胞におけるAlpha1の蛋白発現について検討した。その結果、アミノ酸配列より予測されたサイズは30kDaであるが、これよりも大きなサイズのおよそ38〜40kDaのバンドが認められた。このサイズの違いについては、Alpha1蛋白の翻訳後修飾の可能性が示唆され、現在検討中である。
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