研究概要 |
本計画の遂行にあたり、平成14年度に得られた研究成果は以下の通りです。 1.酸化LDLによるPKC活性化の検討 平成13年度に確立したプロテインキナーゼC(PKC)アイソフォーム特異的活性測定系を用いた検討により、酸化LDLによって、大動脈平滑筋細胞においてはPKCαおよびPKCδの活性化が、血管内皮細胞においてはそれらに加えてPKCβの活性化が起こることを明らかにした。 2.PONの機能解析-PONは酸化LDLによるPKC活性化を抑制するか- 酸化LDLによるPKC活性化がパラオキソナーゼ(PON)により抑制されるか否かを検討するために、大腸菌を用いて数種類の長さの異なるPON recombinant蛋白を作成したが、不溶性で添加実験に使用することはできなかった。次に、哺乳動物細胞および昆虫細胞を用いて同蛋白を作成したが、発現量が不十分で実用化に至らなかった。このため、PONが存在する高比重リポ蛋白(HDL)を超遠心機で分離し、実験に用いた。その結果、HDLは酸化LDLによるPKCアイソフォームの活性化を抑制することを明らかにした。 3.PKCβ遺伝子多型と動脈硬化 糖尿病血管障害に関連すると考えられるPKCβ遺伝子の5'上流に5つの遺伝子多型を見い出し、このうち互いに連鎖不平衡にあるC(-238)G、C(-287)TおよびA(-348)G多型が、糖尿病大血管障害、特に虚血性心疾患に関連することを明らかにした。 4.総括 酸化LDLは、血管組織においてPKCα,β,δアイソフォームを活性化し、HDLの抗酸化作用を担うPONは、PKC活性化を抑制する可能性が高い。今後、PON合成の調節機序を解明することが、糖尿病血管障害の進展抑制のための創薬につながる可能性がある。
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