研究概要 |
平成13年度 LacZ(control、C群)、C/EBPα(positive control、A群)、C/EBPζ(negative control、Z群)のアデノウイルスをそれぞれ3T3-L1脂肪細胞に感染させ、1)脂肪分化の指標となる脂肪滴の量的評価として、細胞抽出液中の中性脂肪量を測定したところ、A群では、C群と比較して約22%蓄積中性脂肪が増加、逆にZ群では約73%の著明な減少を得た。2)インスリン刺激によるグルコース取り込み量をそれぞれ検討したところ、A群ではC群と比べて有意差なく、Z群ではC群と比べて約35%低下していた。C/EBPαの過剰発現では、インスリン感受性には変化がないものの、脂肪細胞分化に促進的に働くことがわかった。また、C/EBPζの過剰発現により、C/EBPαの働きをブロックすると、脂肪分化を顕著に抑制するとともに、主にIRの転写を抑制し、蛋白発現を抑制することによって、脂肪細胞のインスリン感受性を低下させることがわかった(一部昨年度報告済み。現在、投稿準備中)。 平成14年度 脂肪細胞の分化に関わる2つの重要な転写因子であるC/EBPαとPPARγの転写調節の機構の違いを明らかにするため、内因性C/EBPαとPPARγ転写活性を直接測定する系を確立することを試みた。まずC/EBPα結合領域とPPARγ-responsive elementの下流にリポーター遺伝子(ルシフェラーゼcDNA)を結合させたものをアデノウイルス本体のコスミドに組み込んだウイルス(pAD53とpAD63)を作製し、3T3-L1細胞に感染させ、3日後にルシフェラーゼアッセイにて、それぞれの転写活性を測定した。この内因性PPARγ転写活性の測定法は、3T3-L1脂肪細胞に適応され、ピオグリタゾンにて約8.5倍の転写活性の上昇をみている(Watanabe et al. BBRC,300,429-36,2003)。この研究において、in vitroにおけるインスリンシグナル作用とC/EBPαとPPARγ転写活性の関係を明確にした。また、MAPKやPI-3キナーゼと言ったインスリンシグナルはPPARγ転写を抑制するものの、インスリンの慢性投与下では、逆にPPARγ転写を亢進させることがわかった。現在、種々のアディポサイトカイン(TNFα、レジスチン、アディポネクチン等)が、これら2つの転写因子に対して、どのような調節を行っているか検討している。
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