本研究では、糖尿病における膵β細胞再生制御を目指し、膵管上皮前駆細胞からの膵β細胞分化の分子機構を解明することを目的としている。 <方法>アクチビンAおよびHGFでインスリン産生細胞へ分化誘導したAR42J細胞より作製したcDNA Libraryを、インスリンプロモーター支配下puromycin遺伝子導入AR42J細胞株(AR42J-puro^r)に導入した後、puromycinにて選別し、AR42J細胞の分化に関与する遺伝子をクローニングする。 <研究成果> 1.AR42J細胞で発現するcDNA libraryの作製 精密な条件検討を行い、AR42J細胞を、アクチビンAおよびHGFにてほぼ100%インスリン産生細胞へ分化誘導することに成功した。さらに、この分化した細胞よりcDNA libraryを作製した。 2.インスリンプロモーター支配下puromycin遺伝子導入AR42J細胞株(AR42J-puro^r)の作製 分化誘導していないAR42J細胞に、インスリンプロモーター支配下puromycin耐性遺伝子の安定導入株(全32クローン)の作製に成功し、この細胞株を分化誘導しpuromycin選別に最も適した株の選択を試みた。32クローンすべて、充分に分化誘導されたが、インスリンプロモーターの活性が低くpuromycin耐性を獲得できないことが判明した。 3.AR42J分化誘導前後での遺伝子発現プロファイリング 上記の理由により当初の計画を変更し、1.で作製したcDNA libraryを用い、マイクロアレイ法にて、AR42J細胞を分化誘導した際の遺伝子発現量の変化を解析した。その結果、分化に伴い発現が増加する遺伝子が28種、減少する遺伝子が24種であった。これらのうち、1つの遺伝子は、膵島再生モデルマウスにおいても膵島再生時に発現が増加することが判明し、解析を進めている。
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