研究概要 |
本研究では、real-time RT-PCR法による胃癌リンパ節微小転移の検出能を検討し、その検出能をH-E、免疫組織染色法と比較した。方法:対象は21例の胃癌患者のリンパ節392個と非癌リンパ節1個。全393個のリンパ節を3群に分類:病理陽性群71個、病理陰性群304個、対照群18個(非癌リンパ節1個とm癌の遠隔リンパ節17個)。全てのリンパ節は、半分をH-Eと免疫組織染色に用い、残る半分をreal-time RT-PCRに用いた。AGPC変法にてRNAを抽出し、続いてcDNAを作成。LyghtCyclerを用い、CEA・CK20を標的としたreal-time RT-PCRを行った。蛍光プローブはハイブリダイゼーションプローブを用いた。GAPDHのreal-time RT-PCRも行った。AE1/AE3、CEA、CK20の免疫染色を行い、染色強度を評価した。平均16ヶ月追跡。結果:CEA mRNAの平均値は病理陽性群、病理陰性群、対照群の各々で16,000、21、0.6。非補正CEA値を使用。カットオフ5.0で、1個を除く病理陽性群全てと、病理陰性群中26個が陽性。CK20 mRNAでは、病理陰性群中16個が陽性で、病理陽性群中13個が陰性。CEA、CK20の一方が陽性のリンパ節を陽性と判定する解析法で、病理陽性群全ては陽性、病理陰性群中30個が陽性。病理陽性群全てはAE1/AE3免疫組織染色陽性で、病理陰性群中の11個が陽性。陽性率はH-E、免疫組織染色、複合real-time RT-PCRで各々18.0%、20.9%、25.8%。病理陰性・複合real-time RT-PCR陽性の30個中9個で免疫組織染色で微小転移が確認された。AE1/AE3陽性の11人中、CEAとCK20では各々3人と5人が染色されなかった。mRNA測定値と染色強度はCEAでもCK20でも有意に相関した。早期癌9症例では病理陰性の2個がreal-time RT-PCR陽性、si患者の1例では病理学的に1群転移のみ認めたがreal-time RT-PCRで2群転移を認めた。この3例は現在まで無再発。1例は肝転移再発死亡し、他に4例の腹膜播種再発・肝転移再発を認めた。討論:本研究は胃癌リンパ節微小転移の検出にreal-time RT-PCR法を用いた最初のものである。本法は定量的で迅速であるため臨床応用性が広い。カットオフを定めることにより偽陽性を排除し、複合real-time RT-PCR法にて偽陰性を排除しうる。微小転移が通常のリンパ流領域に存在したこと、少数個の集塊から成る転移巣であったことが、今回予後がよかった理由と考えた。Real-time RT-PCR法は胃癌リンパ節微小転移の検出において鋭敏な検出法である。
|