4週令ウィスター雄ラットにthioasetamide(200mg/kg体重)を週3回、12週間、腹腔内注入し、肝硬変ラットが作成された。経過中7%に肝不全よる死亡が生じたが、同薬剤投与完了時では、90%の割合で腹水を有する肝硬変ラットが作成された。 12週のthioasetamide投与後、13週目にbehavioral studyを施行したところ、コントロールラット群(17週令)と比較し、日中の運動時間に増加傾向を示し、行動距離が有意に増加した。 静脈麻酔下でのradioactive microshere法では、肝硬変ラットでは、コントロールラット(同体重ラット)と比べて、有意に心拍出量の増加・末梢血管抵抗の低下・門脈血流量の低下・肝動脈血流量の増加を認めた。 肝硬変ラットに同所性肝移植を8例行った。全例とも術後2週間生存した。2例に胆管狭窄が原因と思われる高ビリルビン血漿症を認めた。術後2週でのbehavioral studyでは、日中の運動時間、運動距離の改善傾向が認められた。radioactive microshere法で血流運動をすると肝硬変肝移植ラットでは、肝硬変ラットと比べて、心拍出量・末梢血管抵抗・門脈血流量・肝動脈血流量の改善を認めた。 本研究によりラットでは肝移植後には肝硬変に伴う血流動態の異常が術後2週間で改善することが示された。また、本モデルは肝硬変ラットに対する肝移植の実験モデルとして有用であることが示唆された。 本研究の継続ならびに肝硬変ラットモデルの基礎的検討のなかで肝移植における循環動態の経時的変化や心血管系の機能的変化の解明をさらに進めたい。
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